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コラム
飲食店
2024.10.04
飲食店の内装デザインと費用の抑え方
飲食店の成功には、美味しい料理はもちろんのこと、店内の「内装デザイン」も大きく影響を与えます。内装デザインは、顧客の満足度を高め、集客を促進するための重要な要素です。居心地の良い空間や視覚的に魅力的なデザインはリピーターを生み出し、口コミやSNSで広がることで新たな顧客を引きつけることができます。
しかし、多くの経営者が「費用を抑えながらも効果的な内装を実現する方法」に悩んでいるのも事実です。本記事では、飲食店の内装デザインの重要性や費用を抑えるための方法について解説します。開業やリニューアルを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
飲食店内装デザインの重要性
飲食店の内装デザインは、ただの空間の装飾にとどまらず、集客力や顧客満足度に直結する重要な役割を持っています。どれだけ料理が美味しくても、内装が不快な印象を与えたり、居心地が悪いと感じられるようでは、リピーターを得ることは難しくなります。また、近年ではSNSの普及によって内装の写真や動画が瞬く間に拡散されることから、視覚的な要素がますます重要視されるようになりました。顧客がSNSに投稿したくなるような内装デザインを取り入れることで、結果的に宣伝効果も得られるのです。本章では、内装デザインが持つ具体的な役割について詳しく解説していきます。
集客を高めるデザインのポイント
飲食店の集客力を高めるためには、内装デザインが顧客にどのような影響を与えるかを理解し、それを最大限に活用することが必要です。まず、視覚的な第一印象が非常に大切です。内装は店舗の「顔」ともいえますので、外観から中に入るまでの流れで顧客に良い印象を与えることが、集客につながります。例えば、エントランスを開放的にし、明るい照明を使うことで、店内に入りやすい雰囲気を作ることができます。また、店外から店内の様子が見えるガラス張りのデザインは、通行人に対して「雰囲気の良さ」を直接伝えることができるため、初めての顧客にも安心感を与えます。
次に、テーマ性を持たせた内装が効果的です。テーマを明確に設定することで、内装に統一感を持たせることができ、顧客が店内にいる間にブランドの世界観を感じられるようにします。例えば、自然をテーマにしたカフェでは、木材を多用し緑を取り入れることで、リラックスした雰囲気を演出することができます。色彩や照明の使い方も重要な要素です。色には心理的な効果があり、暖色系の色(オレンジや赤)は食欲を刺激する効果があるため、レストランやカフェに適しています。また、照明の使い方によって店内の雰囲気は大きく変わります。例えば、夕方から夜にかけては暖かみのある照明を使うことで、顧客にリラックス感を与え、長居したくなる空間を作り出します。
さらに、顧客の動線を意識したレイアウトも忘れてはなりません。レジやトイレ、各テーブルの配置は、顧客が自然に移動できるように設計することが重要です。動線が不明確だと混雑の原因となり、顧客の満足度を下げてしまいます。動線をスムーズに設計することで、混雑を避け、スムーズなサービス提供が可能となり、顧客の満足度向上にもつながります。
顧客満足度を高めるデザイン要素
内装デザインは、顧客満足度を高めるためにも非常に重要です。顧客が店内で過ごす時間を快適にするためには、いくつかの重要な要素を押さえる必要があります。
清潔感のある空間作り
飲食店において清潔感は、顧客に安心感を与える最も重要な要素の1つです。店内が清潔で整然としていることは、顧客に「この店は信頼できる」と感じさせる要因となります。例えば、明るい色の壁や床を使用することで、汚れが目立ちやすくなり、清掃が行き届いていることを顧客にアピールすることができます。また、トイレや洗面所などの水回りも内装デザインの一部と考え、常に清潔であるようにすることが大切です。清潔感のある空間作りは、顧客の再訪意欲を高め、リピーターの獲得にもつながります。
快適さを意識したインテリア
飲食店での体験をより良いものにするためには、インテリアの快適さが重要です。椅子やテーブルの配置、素材の選択は、顧客が長時間快適に過ごせるかどうかに直結します。例えば、ソファー席を設けることで、ゆっくりと過ごしたい顧客に適した空間を提供することができます。一方で、回転率を重視する店舗では、椅子を少し硬めにすることで滞在時間を適度にコントロールすることも可能です。
さらに、温度や音環境も重要です。エアコンの風が直接当たらないように席を配置したり、適度な音楽を流すことで、リラックスできる環境を提供することができます。これらの工夫により、顧客が「また来たい」と感じる店舗作りが実現します。
SNS時代の映える内装作り
近年、SNS映えは飲食店の成功に欠かせない要素となっています。顧客が店舗を訪れた際、内装を写真に収めてSNSに投稿することで、その店舗の認知度が広がり、新たな顧客を呼び込むことが可能です。そのため、SNS映えを意識した内装デザインは、集客効果が高いといえます。
まず、フォトジェニックなスポットを店内に設けることが有効です。例えば、壁に大きなアートを飾ったり、ユニークなネオン看板を取り付けることで、顧客が写真を撮りたくなるようなポイントを作り出します。これにより、顧客は自然と写真を撮影し、SNSに投稿することで店舗の宣伝をしてくれることになります。
また、照明の工夫もSNS映えには欠かせません。インスタグラムなどのSNSでは、光の当たり具合が写真の美しさを決定づけます。間接照明を活用して柔らかい光を演出することで、料理やインテリアを美しく見せることができます。特に夜の時間帯には、温かみのある照明がリラックスした雰囲気を作り出し、写真映えする空間を提供します。
さらに、カラーコーディネートもSNS映えを意識した内装作りには重要です。鮮やかな色合いや独特の配色を取り入れることで、他店との差別化を図ることができます。例えば、ピンクやパステルカラーを基調にしたカフェは、特に若年層の女性に人気が高く、写真を撮りたくなる空間として注目されることが多いです。このように、内装デザインに工夫を凝らし、顧客に「シェアしたい」と感じさせることが、SNS時代の集客戦略として非常に有効なのです。飲食店の内装デザインは、ただの見た目の良さを追求するだけでなく、顧客体験の向上やブランド価値の強化に大きく寄与します。魅力的な内装を作ることで、顧客にとって「また訪れたい」と思える店舗にすることが可能です。
飲食店内装デザインを成功させるコツ
飲食店の内装デザインは、顧客の第一印象を左右し、集客や顧客満足度に大きく影響を与える重要な要素です。そのため、内装デザインを成功させるためにはコツをしっかり押さえることが欠かせません。本章では、明確なコンセプト設計から動線の設計、さらにはコストパフォーマンスを考慮した方法まで、内装デザインを成功させるための具体的なポイントを詳しく解説していきます。
明確なコンセプト設計
飲食店の内装を成功させるための第一歩は、明確なコンセプト設計を行うことです。コンセプトは、店舗全体の雰囲気や方向性を決める重要な基盤であり、これがしっかりと設定されていないと内装デザインに一貫性が欠けてしまいます。その結果、顧客にどのような体験を提供したいのかが曖昧になり、印象に残らない店舗になってしまうことも考えられます。
ターゲットに合わせたテーマ設定
コンセプト設計において重要なのは、ターゲットに合わせたテーマを設定することです。ターゲットが若いカップルなのか、子供連れのファミリーなのか、あるいはビジネスパーソンなのかによって、求められる内装は大きく異なります。例えば、若いカップルをターゲットにする場合、ロマンチックで落ち着いた雰囲気を演出するために、ソフトな照明やプライベート感を高める仕切りが必要です。一方、ファミリー向けの店舗であれば、明るく清潔感のある空間を作ることで、子供を連れても安心して過ごせる雰囲気を提供することが大切です。
また、テーマを設定する際には、店舗の特徴を強調するような要素を取り入れることも効果的です。例えば、地元の食材を使用した料理を提供する飲食店であれば、その地域の文化や自然を表現した装飾を取り入れることで、顧客に特別な体験を提供することができます。ターゲットに合わせたテーマを設定し、そのテーマに基づいた内装を施すことで、顧客の記憶に残る特別な店舗を作り上げることが可能になります。
色彩と照明の調整
コンセプト設計と同様に重要なのが、色彩と照明の調整です。色や照明の使い方によって、店舗全体の雰囲気が大きく変わるため、内装の成功において欠かせないポイントとなります。色には心理的な影響があり、例えば赤やオレンジなどの暖色系は食欲を増進させる効果があるため、飲食店には非常に適しています。一方、青はクールな印象を与えるため、リラックスした雰囲気を求めるカフェなどに適しています。このように、店舗のコンセプトや提供する料理の特徴に合った色彩を選ぶことが大切です。
照明についても、明るさや色温度を調整することで、顧客の気分や行動に影響を与えることができます。例えば、温かみのある照明を使うことで、リラックスできる雰囲気を作り出し、顧客に長時間滞在してもらえるようにすることができます。一方、明るい白色の照明を使用することで、清潔感を強調し、特に昼間の営業時には活気を感じさせる空間を演出することが可能です。このように、色彩と照明の調整によって、顧客の居心地を左右する重要な要素をコントロールすることができます。
動線とレイアウトの設計
動線とレイアウトの設計は、飲食店の内装デザインにおいて非常に重要な要素です。動線とは、顧客や従業員が店内をどのように移動するかの経路を指し、これが効率的に設計されていないと、混雑やサービスの遅れなどの問題が発生する可能性があります。動線設計では、まず顧客が入店してから座席に案内されるまでの流れ、そして注文、料理の提供、会計までの一連の流れをスムーズにすることが重要です。入口から座席、レジ、トイレへのアクセスがスムーズであることは、顧客にとって快適な体験を提供するための基本です。
また、従業員の動線も同様に効率的に設計することが必要です。厨房から客席までの距離が短く、邪魔されることなく移動できるようにすることで、迅速なサービスを提供することができます。このように、動線の設計に配慮することで、顧客の満足度を高めるとともに、従業員の作業効率を向上させることができます。さらに、レイアウトについても、顧客同士の距離感を適切に保つことや、プライバシーを重視した席の配置など、快適さと使いやすさを考慮した設計を行うことが重要です。
コストパフォーマンスを考えた設計
飲食店の内装デザインでは、コストパフォーマンスを考慮した設計が不可欠です。限られた予算の中で最大限の効果を得るためには、無駄を省き、必要な部分に投資を集中させることが重要です。まず、コストを抑えるためには、既存の設備や家具を活用することを検討しましょう。特に居抜き物件の場合、前の店舗で使用されていた設備を活用することで、大幅なコスト削減が可能です。ただし、居抜き物件を活用する際には、新しいコンセプトに合った改装が必要な場合もあるため、その点を見極めることが大切です。
また、内装素材の選定においても、見た目と耐久性のバランスを考えることが求められます。高価な素材を使用することで高級感を演出することはできますが、それが必ずしもターゲット顧客にとって必要な要素であるとは限りません。例えば、カジュアルな雰囲気を求める店舗であれば、シンプルで手入れのしやすい素材を選ぶことで、維持コストを抑えながら快適な空間を提供することが可能です。
さらに、内装デザインの際にプロに依頼する場合、複数の業者から見積もりを取って比較することも重要です。同じ工事内容でも業者によって費用が異なるため、相見積もりを取ることで最もコストパフォーマンスの良い業者を見つけることができます。このように、コストを意識しながらも必要な部分にはしっかりと投資することで、顧客に満足してもらえる内装を実現することができます。
飲食店の内装デザインを成功させるためには、明確なコンセプト設計、動線とレイアウトの効率的な設計、そしてコストパフォーマンスを意識した設計が不可欠です。これらのポイントを押さえることで、顧客にとって魅力的で居心地の良い空間を提供し、結果として店舗の成功につながる内装デザインを実現することができます。
飲食店内装費用の目安と管理方法
飲食店を開業する際、内装費用は多くの経営者にとって頭を悩ませる重要な要素です。どのように費用を管理し、どの程度の投資が必要なのかを把握することで、限られた予算内で最も効果的な内装デザインを実現することが可能になります。本章では、内装費用の相場と内訳、そして費用を抑えるための方法として注目されている居抜き物件の活用について詳しく解説していきます。
費用相場と内訳
飲食店の内装費用は、規模や業態によって大きく異なります。特に、スケルトン物件(すべての設備が取り外された状態の物件)と居抜き物件(前のテナントの内装が残っている物件)では、費用のかかり方が異なるため、あらかじめ理解しておくことが重要です。
まず、スケルトン物件の場合、一般的な内装費用の相場は坪単価で30万~50万円程度です。たとえば、10坪の飲食店であれば、300万~500万円程度が目安となります。スケルトン物件では、内装を一から作り上げる必要があるため、デザインの自由度が高い反面、費用も比較的高額になります。
内装費用の内訳としては、大きく以下のように分けられます。
- 内装デザイン費:全体の10~15%程度。デザインのプランニングや設計図の作成にかかる費用です。
- 施工管理費:全体の10~15%程度。工事の進行管理や施工の品質を保つための費用です。
- 内装工事費:全体の30~40%程度。壁や床、天井の仕上げなど、実際に内装を作り上げるための費用です。
- 厨房設備工事費:全体の20~30%程度。飲食店に欠かせない厨房機器の設置や配管工事にかかる費用です。
一方で、居抜き物件では、既存の設備を活用することができるため、坪単価で15万~30万円程度と、スケルトン物件に比べて内装費用を大幅に削減することが可能です。前のテナントが残した設備や内装がそのまま使用できる場合、工事の手間が少なく、コストが抑えられるのが大きなメリットです。ただし、居抜き物件では残っている設備が店舗のコンセプトに合わない場合、改修が必要になることもあるため、注意が必要です。
居抜き物件でのコスト削減
居抜き物件を活用することは、飲食店の内装費用を抑える有効な手段です。特に初期投資を抑えたい開業者にとって、居抜き物件は魅力的な選択肢となります。前のテナントが残した厨房設備やカウンター、客席などを再利用できるため、新たに購入する必要がなく、コスト削減につながるからです。
居抜き物件の活用にあたっては、まず残っている設備や内装の状態を確認することが重要です。設備が老朽化していたり、故障していたりする場合は、修理や交換のコストが発生するため、トータルで考えた際に居抜き物件が本当にお得かどうかを見極める必要があります。また、内装のデザインが自店舗のコンセプトと大きく異なる場合、改装費用がかかるため、その点も考慮することが求められます。
さらに、造作譲渡料という形で、前のテナントから設備や内装を買い取る場合があります。この費用は物件によって異なりますが、交渉次第では割引されることもあるため、不動産業者や前のテナントとしっかり話し合うことが大切です。
居抜き物件の最大のメリットは、工事期間を短縮できる点です。内装工事の期間が短縮されることで、早期に開業することが可能になり、営業開始から収益を得るまでの期間を短縮することができます。これにより、開業後の資金繰りにも余裕が生まれやすくなるため、初めて飲食店を開業する方にとっては非常に有利です。
居抜き物件の選定時には、物件の立地やターゲット顧客との相性も考慮することが必要です。いくら内装費用が安くても、立地が悪く集客が見込めない場所では、経営が難しくなる可能性があります。居抜き物件を選ぶ際には、費用面だけでなく、長期的な経営の視点からも判断することが成功の鍵です。
まとめ
飲食店の内装デザインは、店舗の成功を左右する重要な要素であり、特に内装費用の管理は慎重に行うべきです。スケルトン物件での内装は自由度が高い反面、費用も高額になりがちです。一方で、居抜き物件を活用することで、初期費用を大幅に削減し、短期間での開業が可能になります。ただし、どちらの選択肢を取るにしても、店舗のコンセプトやターゲット顧客に合ったデザインを実現することが、長期的な成功につながります。
また、内装費用の内訳を正しく理解し、どの部分に重点的に投資すべきかを見極めることが重要です。例えば、顧客の満足度に直結する客席の快適さや照明の工夫には、適切な費用をかけるべきです。一方で、コストを抑えられる部分では無駄を省き、効率的に予算を活用しましょう。
飲食店の内装デザインを成功させるためには、費用とデザインのバランスを保ち、顧客にとって魅力的な空間を提供することが不可欠です。今回解説した費用の目安や管理方法を参考に、自店舗にとって最適な内装デザインを実現し、顧客に愛される店舗作りを目指してください。
この記事を書いた人
青島 雅人
大学卒業してすぐ金型の図面作成の業務を経験後、住宅業界で6年(営業と現場監督)、店舗設計業界で8年経験し、100現場以上担当してきた一級建築施工管理技士 & 建築士。これまで細かい図面作成はもちろんのこと、現場管理をする上での職人さんへのコミュニケーションは欠かさず、しっかりと現場を管理してきており、様々な会社様が協力関係にある。また、これまでの経験から、住宅だけでなく、飲食店やサロンなど店舗の建築を任されることが多い。お店づくりや建築にあたっての不安やお悩みはご相談はお任せください。
大学卒業してすぐ金型の図面作成の業務を経験後、住宅業界で6年(営業と現場監督)、店舗設計業界で8年経験し、100現場以上担当してきた一級建築施工管理技士 & 建築士。これまで細かい図面作成はもちろんのこと、現場管理をする上での職人さんへのコミュニケーションは欠かさず、しっかりと現場を管理してきており、様々な会社様が協力関係にある。また、これまでの経験から、住宅だけでなく、飲食店やサロンなど店舗の建築を任されることが多い。お店づくりや建築にあたっての不安やお悩みはご相談はお任せください。