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飲食店

2024.04.02

スターバックスの店舗から学ぶ。魅力的な内装デザインとは?

鳥取県産の木材を外壁や天井、コミュニティテーブルの天板などに使用するスターバックス コーヒー シャミネ鳥取店
スターバックス コーヒー シャミネ鳥取店

皆さん、スターバックスの店舗に足を運んだことはありますか?
「コーヒーを楽しむ場所」としての役割を超え、誰もが心地よく感じる空間を作り出しているのがスターバックスです。そのデザインに隠された秘密をご存じでしょうか?

本日は、そんなスターバックスの内装デザインについてお話しします。
なぜスタバの店舗は、どこに行っても「おしゃれ」と感じるのか?
それは、ブランドの理念である「サードプレイス」というコンセプトがすべてのデザインに反映されているからなんです。

この記事では、スターバックスの内装デザインの基本理念、具体的な工夫、さらには世界中のユニークな店舗事例を取り上げます。これからカフェを開業しようと思っている方や、空間デザインに興味がある方にとって、ぜひ参考になる内容です。では、早速スターバックスのデザインの世界へご案内しましょう!

スターバックスの店舗デザインの基本理念とは?

スターバックスの店舗デザインは、単なるカフェの内装にとどまりません。訪れる人々に特別な体験を提供する空間を作り出すことを目指し、綿密な計画とブランド哲学が息づいています。ここでは、スターバックスが追求するデザインの基本理念を、地域性とブランドアイデンティティの2つの視点から掘り下げます。

日本の伝統を活かしたスターバックスの店舗内装。木目調と和紙を使用した温かみのあるデザイン
スターバックス京都二寧坂ヤサカ茶屋店

地域性を活かした設計

スターバックスの店舗デザインで特筆すべきは、地域性を重視したアプローチです。世界中に展開するスターバックスですが、どの店舗もその地域に溶け込みつつ、独自の魅力を放つよう設計されています。

文化や歴史の取り入れ方

各店舗は、その土地の文化や歴史を尊重してデザインされています。
例えば、日本の京都にある店舗では、伝統的な日本家屋を活用した内装や、和紙や漆といった地元の素材が採用されています。また、海外でも歴史的建築物をリノベーションした店舗が多く、地域の文化を体現する装飾や家具が配置されています。

こうしたデザインは、ただ美しいだけでなく、地域の物語を伝える媒体としても機能しています。訪れた人々がその土地の背景に触れ、より深い体験を楽しめるよう工夫されているのです。

地域コミュニティとの融合

スターバックスは、店舗を地域コミュニティの中心として位置づけています。
沖縄本部町店のように、地元の人々が制作に関わったアート作品を展示することで、地域とのつながりを強調。さらに、地域の特色を反映した家具や建材を積極的に取り入れることで、地元住民が「自分たちの場所」と感じられるよう設計されています。

これにより、単なるカフェではなく、地域との共生を体現する空間として存在感を発揮しています。

ブランドアイデンティティ

一方で、スターバックスの店舗には、一貫したブランドアイデンティティが強く反映されています。これは、世界中どこに行っても「スタバらしさ」を感じられるデザインの秘密でもあります。

世界共通の価値観

スターバックスのデザインは、「サードプレイス」の理念をベースにしています。
「家庭でも職場でもない第3の場所」として、誰もがリラックスできる空間を提供することが目標です。そのため、店舗全体に自然素材や温かみのある照明が使われ、どの国の店舗でも居心地の良さを感じられる設計が施されています。

また、ブランドカラーである緑や、独特のロゴデザインは、世界中の店舗で一貫して使用されており、スタバならではの安心感を生み出しています。

各店舗の独自性

一方で、スターバックスは各店舗ごとの独自性を大切にしています。
これは、チェーン店でありながらも「すべての店舗は異なる」というユニークな特徴を生む要素です。例えば、店舗ごとに異なるアート作品や装飾が飾られ、その地域ならではの雰囲気が表現されています。

特に、リージョナルランドマークストアでは、建築家やデザイナーが地域特有のデザインを創造し、その土地でしか味わえない特別な空間を提供しています。

スターバックスの店舗デザインは、地域性とブランドの一貫性を巧みに融合させています。次に店舗を訪れる際には、デザインに隠された物語や地域性に注目してみてはいかがでしょうか?

雰囲気がいいスターバックスならではの内装デザインのポイント

スターバックスが多くの人々を引きつける理由の一つは、その内装デザインの心地よさです。ここでは、素材選び、空間演出、アートワークという3つの観点から、スターバックスならではのデザインポイントを解説します。

木材を使用したスターバックスのカウンターデザイン。自然素材がもたらす温かい空間
スターバックス太宰府天満宮表参道店

素材選びのこだわり

スターバックスの店舗では、素材選びに対する細やかなこだわりが感じられます。この選択が、居心地の良い空間作りに大きく貢献しています。

自然素材の効果的活用

スターバックスの多くの店舗では、自然素材を効果的に活用しています。
木材、石、ガラスなど、触れるだけで温かみを感じる素材がふんだんに使われており、来店客が自然とのつながりを感じられるようデザインされています。

例えば、カウンターテーブルには無垢材が使われていることが多く、素材そのものの風合いを生かしたデザインが特徴です。また、壁や天井には木目調や自然石を取り入れることで、落ち着いた雰囲気を醸し出しています。

羽目板デザインの意図

一部の店舗では、天井や壁に羽目板デザインが取り入れられています。このデザインは、木材が持つリズミカルな質感を空間全体に与え、居心地の良さと高級感を両立させる効果があります。

羽目板を使うことで、広い空間でも親近感と一体感を生み出すことができるため、大型店舗でも落ち着ける空間として評価されています。

空間演出テクニック

スターバックスの店舗は、空間の演出においても計算が行き届いています。これにより、ただの「カフェ」ではない、特別な体験を提供しています。

照明計画の特徴

スターバックスの照明デザインは、間接照明や自然光を巧みに取り入れることで、空間全体に温かみを持たせています。
たとえば、ペンダントライトを規則的に配置し、柔らかい光でリラックスした雰囲気を演出。さらに、壁面に設置された絵画や装飾品をスポットライトで照らすことで、空間にアクセントを加えています。

また、大きな窓を活用して自然光を取り込む店舗も多く、時間帯によって変化する光が、店舗内の雰囲気にダイナミックな表情を与えています。

天井高による心理効果

スターバックスの店舗では、天井高が空間デザインに大きく影響を与えています。
例えば、座席エリアの天井をあえて低くすることで、落ち着きと集中力を高める効果が期待されます。一方、カウンター周辺は天井を高く設計し、開放感を演出することで、店舗全体にメリハリを与えています。

このような天井高の工夫により、来店者は自然と短時間で満足感を得られる心理的効果を体験します。

アートワークの活用

スターバックスのデザインには、アートワークも重要な要素として取り入れられています。これが、店舗ごとの個性を引き立てる役割を果たしています。

ストーリー性の表現

多くの店舗では、壁や装飾品にその地域特有のストーリーが込められたアートワークが使用されています。
たとえば、沖縄本部町の店舗では、海岸で回収された漂流物をアート作品に再利用し、地域住民とともに制作した作品を展示。このような取り組みは、環境意識や地域との結びつきを象徴しています。

アートが空間に物語を加えることで、来店者に単なる「飲食」以上の価値を提供しています。

装飾品やインテリアの選定基準

装飾品やインテリアは、デザインだけでなく、ブランド理念を体現するものが厳選されています。
例えば、古材をリサイクルして作られた家具や、地元アーティストが手掛けた装飾品が用いられることが多いです。これにより、店舗ごとに異なる温かみや個性が感じられる空間を作り上げています。

スターバックスの内装デザインは、素材選びから空間演出、アートワークに至るまで、細部にまでこだわりが詰め込まれています。このような工夫が、訪れる人々を魅了する店舗を作り出しているのです。

スターバックス外装デザインの戦略と工夫

スターバックスの店舗は、内装だけでなく外装デザインにも細心の注意が払われています。外観の印象が、訪れる人々に最初の「スタバらしさ」を伝える大切な役割を果たしているのです。ここでは、外観の重要ポイントと視認性の確保という2つの視点から、スターバックスの外装デザインの戦略を解説します。

スターバックス店舗の間接照明と高天井デザイン。リラックスできる空間演出
スターバックスコーヒー山口市中央公園店

外観の重要ポイント

スターバックスの店舗は、立地条件や周囲の景観に調和しながらも、ブランドとしての一貫性を保つ工夫が施されています。ここでは、素材選びやテラス席の設計思想を通じた外観デザインのポイントを見ていきましょう。

素材による印象づくり

スターバックスの外観には、自然素材が頻繁に使用されています。木材、石材、ガラスなど、自然に由来する素材を組み合わせることで、周囲の環境と調和しつつ、高級感と親近感を兼ね備えたデザインを実現しています。

例えば、都市部の店舗では、黒いタイルやガラスを組み合わせたモダンな外観が特徴です。一方、郊外店舗では木材を多く取り入れ、温かみのあるデザインに仕上げることで、訪れる人々に心地よさを感じさせています。

このような素材の選定により、どの店舗でも「スタバらしさ」を感じられる統一感を持ちながら、それぞれの立地に合わせたデザインを提供しています。

テラス席の設計思想

多くのスターバックス店舗には、テラス席が設けられています。この設計は、外装デザインの一部として重要な役割を果たしており、店舗の魅力を高めるための戦略的要素です。

特に、テラス席が街路や公園に面している場合、通行人がくつろぐ人々の姿を目にすることで、「入りたくなる」心理を誘発します。また、風通しの良い空間や自然光を取り入れたテラス席は、顧客にとって特別なひとときを演出します。

さらに、テラス席は地域の環境に配慮したデザインが取り入れられることが多く、景観保護や地元の文化に溶け込む店舗づくりに貢献しています。

視認性の確保

スターバックスは、外装デザインにおいても視認性を重視しています。店舗がどこにあるのか一目でわかるような工夫が、ブランドの認知度を支えているのです。

ロゴ配置の工夫

スターバックスのロゴは、外観デザインの中で最も目を引く要素の一つです。特徴的な緑のロゴは、どの店舗でも目立つ場所に配置され、遠くからでもスターバックスであることを認識できるように設計されています。

都市型店舗では、建物の外壁にロゴを水平に配置することで、歩行者や車両からの視認性を確保。一方、郊外の店舗では、高い看板やドライブスルー用のサインにロゴを取り付けることで、遠くからでも店舗の存在をアピールしています。

このように、ロゴのサイズや配置場所を工夫することで、スターバックスが誰にでも見つけやすい店舗となっているのです。

サイン計画の特徴

スターバックスでは、ロゴだけでなく、サイン全体のデザインにも工夫が凝らされています。例えば、文字サインは建物の素材や色調と調和するように設計されており、店舗全体のデザインに一体感を持たせています。

また、サインには適切な照明が施されているため、夜間でも視認性が高く、暗い時間帯でも店舗の存在感を保つことができます。このようなサイン計画は、ブランドの信頼性と認知度を高める重要な要素となっています。

スターバックスの外装デザインは、素材選びや視認性の工夫を通じて、顧客に親しみやすく魅力的な印象を与えています。次に店舗を訪れる際には、その外観に込められた戦略や工夫を意識してみると、新たな発見があるかもしれません。

世界の個性あふれるスターバックス店舗デザイン事例

スターバックスは、世界各地の文化や地域性を取り入れた個性的な店舗デザインでも知られています。その中には、歴史的建造物を活用したものや独創的なアート性に富んだ空間など、訪れる人々を驚かせる事例が数多くあります。ここでは、特に注目すべきデザイン事例を「歴史的建造物の活用」と「独創的なデザイン展開」の2つの視点からご紹介します。

伝統と革新が共存する登録有形文化財の店舗(弘前公園前店)
スターバックス弘前公園前店

歴史的建造物の活用例

歴史的な建物を活用したスターバックス店舗は、地域の文化や伝統を未来に継承するという役割を果たしています。

伝統と革新の融合

スターバックス鹿児島仙巌園店は、世界文化遺産に隣接した登録有形文化財を改装して作られました。この店舗は、伝統的な建築物の風格を保ちながら、現代的なカフェ文化を融合させたデザインが特徴です。

また、京都二寧坂ヤサカ茶屋店では、築100年以上の日本家屋を改装し、畳敷きの座席や庭園を配した内装で、訪れる人々に伝統と現代が織りなす独自の雰囲気を提供しています。

建築様式の継承

神戸北野異人館店では、歴史的建造物のデザインを尊重しつつ、元の建築様式を活かした改修が施されています。この店舗では、かつての建物に使用されていた建具やフローリングが再利用されており、建築物としての価値を後世に伝える取り組みがなされています。

これらの事例は、地域の歴史を守りながら新しい価値を生み出す、スターバックスのデザイン哲学を象徴しています。


独創的なデザイン展開

一方で、スターバックスの中には、アートや文化的要素を取り入れた独創的な店舗も多く存在します。

アート重視の空間

スターバックスリザーブ® ロースタリー東京は、建築家隈研吾氏がデザインした外観や、折り紙をモチーフにした天井など、アート性の高い空間が魅力です。各階ごとに異なるテーマが設定されており、来店者は単なるカフェ以上の体験を味わうことができます。

また、オランダの「Starbucks Reserve The Bank店」では、美術館のような内装が施されており、木の温かみを活かした空間でアート作品とともにコーヒーを楽しめます。

文化的要素の反映

沖縄本部町店では、地元の文化を象徴する琉球松や琉球石灰岩を使用したデザインが採用されています。入口にはシーサーが鎮座しており、店舗全体が沖縄の文化を体感できる空間となっています。

台湾の洄瀾門市店では、不要になったコンテナを再利用して作られた迷路のような店舗構造が特徴的です。廃材をアートの一部として取り入れたこの店舗は、持続可能性と独創性を兼ね備えています。

まとめ

スターバックスの店舗デザインには、地域文化や歴史へのリスペクト、そしてブランド哲学を貫く姿勢が込められています。これらは、単にカフェを運営するだけではなく、地域と調和しつつ顧客体験を最大化する空間作りを目指していることを示しています。

店舗設計を検討している方にとって、スターバックスのアプローチは非常に参考になるポイントが多いです。

  1. 地域性の活用:
    地域の文化や歴史を取り入れることで、店舗がその土地ならではの物語を持つ場になります。これにより、訪れる人々に「ここでしか味わえない」体験を提供できます。
  2. 素材選びと空間演出:
    自然素材を活用し、素材が持つ質感や温かみを生かした空間は、居心地の良さを生み出します。また、天井高や照明計画を活用した心理的効果の演出も、顧客の満足度を高める重要な要素です。
  3. ブランドアイデンティティの確立:
    一貫性を持たせながらも各店舗に独自性を与えることで、統一感と特別感を両立させています。これにより、ブランドへの信頼感と愛着が顧客に育まれます。

店舗設計では、内装や外装だけでなく、その店舗が提供する体験全体をデザインする視点が求められます。スターバックスが成功を収めているのは、コーヒーだけでなく、訪れる人々の心に残る空間をデザインしているからです。

これから店舗設計をする皆さんも、スターバックスの事例を参考に、自身のブランドや目的に合った空間づくりを追求してみてはいかがでしょうか。顧客が思わず足を運びたくなるような魅力的な店舗を生み出すヒントが、きっと見つかるはずです。

この記事を書いた人

青島 雅人

大学卒業してすぐ金型の図面作成の業務を経験後、住宅業界で6年(営業と現場監督)、店舗設計業界で8年経験し、100現場以上担当してきた一級建築施工管理技士 & 建築士。これまで細かい図面作成はもちろんのこと、現場管理をする上での職人さんへのコミュニケーションは欠かさず、しっかりと現場を管理してきており、様々な会社様が協力関係にある。また、これまでの経験から、住宅だけでなく、飲食店やサロンなど店舗の建築を任されることが多い。お店づくりや建築にあたっての不安やお悩みはご相談はお任せください。

大学卒業してすぐ金型の図面作成の業務を経験後、住宅業界で6年(営業と現場監督)、店舗設計業界で8年経験し、100現場以上担当してきた一級建築施工管理技士 & 建築士。これまで細かい図面作成はもちろんのこと、現場管理をする上での職人さんへのコミュニケーションは欠かさず、しっかりと現場を管理してきており、様々な会社様が協力関係にある。また、これまでの経験から、住宅だけでなく、飲食店やサロンなど店舗の建築を任されることが多い。お店づくりや建築にあたっての不安やお悩みはご相談はお任せください。

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